片づけたいシリーズ
第1弾「高齢者の独り暮らしサポートはまず片づけから」
【要支援者】 田中 良枝 78歳
息子43歳は大阪に在住。娘39歳は北海道に在住。
夫には一昨年先立たれその後、一人暮らしに。
【ケアマネージャー】 齋藤 和子 47歳
若い時に介護福祉士として働いていたが、結婚し専業主婦に。
月日が流れ、子育てがひと段落ついたことを機に、再就職しケアマネ―ジャーになった。赴任先は墨田区。
お風呂場も物置化
今月から担当になった、田中のおばあちゃん。
本日は初めてのお家訪問でデイケアサービスが受けられる環境かどうかの確認。
(墨田区八広▲-▲-▲ あ、ここだな!)
「ピンポーン」
「齋藤さんお待ちしてましたよ」と田中のおばあちゃん。
「今日はよろしくお願いしま・・うっ!!」
家に一歩はいると玄関、廊下、いたるところに散乱するごみ袋、新聞紙、古い家電・・
実は最近多い高齢者の家がプチごみ屋敷化していてそもそも入れないという事態・・
(たしか先輩もそんなこと言ってたような・・)
足の踏み場ないし、そして結構ニオイが・・・
元々はちゃんと片づけもしていたと思うが、
高齢になると整理整頓するだけの判断力も低下してくるし、
なにより体力も衰えてくる。
片づけたくても片づけられないというのは仕方のないことだった。
(こういう場合ってどうするんだっけ?)
その日はほとんど何もできずセンターに戻る。
先輩に相談すると、
とアドバイスしてくれた。
それを聞いた和子は明日、田中さんに話してみようと思うのだった。
このままじゃ、支援サービスができない
翌日、田中さんに片付けの話をすると、
和子さん、これはゴミじゃないの。
「・・・汗」
和子は思った。
(不衛生なのは危険よ。このままじゃ、介護士さんはおろか家族でさえも入れなくなっちゃうじゃない。デイケアもできなくなっちゃうし。下手したら火事になる可能性だってある。そしたらご近所さんも迷惑をかけることになるわ...。)
たたみかけるように田中のおばあちゃんは言った。
それに片付けをお願いしたらお金がいっぱいかかるでしょう?わたしお金ないの。
それなら、娘さんや息子さんに相談したらどうですか?
ええー、私が言ったら絶対怒られる!!だったら和子さんお願いして。
(あ、こっちで交渉してもいいんだ!)
わかりました、任せてください。
さっそく娘さんに電話し、片付けの件を相談。プチゴミ屋敷を心配していた娘さんからは意外にもすんなりOKが出た。
見積りどれくらいになるかお知らせ下さい。
和子は先輩に聞いた業者に連絡をした。
そのほかにWebで見つけた会社にも問い合わせフォームから依頼を投げた。
センパイから紹介してもらった会社は首都圏や関西地方にて事業を展開している『かたさぽ』というサービス。全国13拠点を構える航空集配サービス株式会社が運営している。
和子は早速問い合わせた。
もしもしサービスについて伺いたいのですが?
いつもありがとうございます。
『かたさぽ』の福山が承ります。本日はどのような相談でしょうか?
和子は田中さんの家の状況を伝え、且つだいたいの料金がわかるものはないか尋ねた。
なるほど・・であれば下見前にWebサイトの問い合わせフォームかLINEで画像を送ってもらえたら 概算のお見積りは出せますよ。それで問題なければ下見して確定お見積りをお出しできます。片付けする対象のお部屋の写真だけ撮ってください。
それだけで見積りOKなんですか?
よかった!そう何度も立ち会いは厳しいと思ってたんです。
承知しております。齋藤様に部屋の画像を撮って頂く手間は頂くのですが、
どうぞよろしくお願い致します。
そして後日、和子は田中さんの部屋の写真をスマホでとって、LINEで送った。
その日の夕方、・・
え!もう来た?!
見積りは和子が考えていたよりは少し高かったが、おおよそ予算範囲だった。
ま、こんなもんか。
下見当日
『かたさぽ』福山です。片付けしたいお部屋を確認させてください。
こちらです。
案内すると福山さんは慣れた様子で部屋の確認をしていった。
見積もりにほとんど差異はなかったのでこの費用でできます。
福山さん、ちょっと相談なんですが実はお客様の予算をちょっとオーバーしてまして、 例えばこのお見積りの作業のうち、どこか削れるものはないですか??
うーん、今回は頂いている項目全て処分とのことなので、削ると逆に不用なものが残ってしまいます。
ですよね・・
和子はどうしようか悩んだ・・すると、
項目を削るのはできないですが、例えば作業効率を高めるために不要なものと必要なものの目印をつけてもらえたら、当日の確認作業を減らすことができるので、多くはないですがお見積もりの調整しますよ。
それは助かります!
これで費用の面は解決した。
作業当日
作業が終わり、福山さんたちは帰っていった。
気づくと田中さんもいない。
和子は荷物のない廊下から、片付いた田中さんの部屋に入ると、
和子さん、きれいな部屋っていいねー
片付けに渋っていた田中さんはきれいになった和室で寝転がっていた。
(これで田中さんは支援サービスが受けられる)
和子は一安心してセンターに戻るのだった。
※この内容は事実を元にしたオリジナルストーリーです。
結構そういうケースはあるんだけど、片付け自体はケアマネージャーがやる必要はなくて、業者の見積もりを取ってやってもらえればいいんだよ。ただし、費用の発生することだから田中さん本人に納得してもらうか、あるいは決定権のある家族に承認してもらわなければいけないんだけど。